アトス

アトス

ギリシャの北部、エーゲ海に突き出た半島に、人里離れた聖地があります。

アトス自治修道士共和国はギリシャ正教最大の聖地であり、ギリシャ国内にありながら自治法権が認められている一種の宗教国家です。

アトスの基本情報

アトスが位置しているのは、エーゲ海に突き出しているアトス半島の先端、標高約2000メートルのアトス山です。

海に面した断崖絶壁の地で、ギリシャ本土との陸路は深い森によって隔たれています。住民約1400人のほとんどが修道士で、本土との陸上交通は遮断されています。1日2便の船だけが「下界」との間を結んでいます。

自然の厳しさ、美しさを併せ持つこの景観。アトス山は1988年に世界遺産にも登録されています。

また、アトスには女性禁制の規律があります。巡礼者は男性に限られており、居住においても18歳以上の正教に属する男性に限られています。

一部の修道院や施設だけが女性禁制なのではなく、アトス全体が女性を禁じているのです。船に乗ってアトスの岸辺に近づく場合も、近づける距離は500mまでと決められています。

女性禁制なのは人間だけではありません。少数の家畜もいるのですが、持ち込まれる動物もメスの持ち込みは一切禁止されているんだそうです。

EUからの批判や忠告にも耳を貸さず、今でも頑なに扉を閉ざしています。もしアトスに男性以外の生き物がいるとすれば、もともと生息している植物や昆虫、動物のメスだけでしょう、、、多分。

アトスは修道院の共同体

ギリシャ正教の修道院が20箇所も点在するこの領域は、ギリシャ政府より自治を認められた修道院の共同体です。最初の修道院が創設されたのは963年。以来、修道士たちは祈りと労働の生活を送ってきました。

また、アトス山の修道院には膨大な聖画や壁画、彩色写本があることでも知られています。修道院を訪れた際にはその美しい壁画を眺めてみるのも面白いでしょう。

出典:http://www.wikiwand.com

毎朝3時に鳴り響く木槌の音で一日は始まります。修道士、巡礼者は共同浴場でシャワーを浴びて、身支度を整えます。礼拝堂では聖歌隊が聖歌を詠唱し、ステンドグラスから差し込む朝の光が堂内を満たしていきます。穏やかな隠遁生活が今なお続く場所が、エーゲ海の岸辺にあるのです。

観光で訪れれば、修道士たちと同じ場所で同じ生活を体験できるなど、貴重な体験になるでしょう。

下記に、いくつか修道院を紹介します。

シモノペトラ修道院

エーゲ海を一望できる険しい崖の中腹に建てられたシモノペトラ修道院。

出典:https://horietakeyuki.com

330mもの崖の上に建ち、眼下には海が広がるという、驚きの立地で知られています。アトスはもともと岩山ですが、シモノペトラ修道院は巨大な一枚岩の上に建っています。

海に向かって堂々とそびえ立つその姿は、修道院というよりも要塞、といった感じを受けます。

何度も大火に見舞われてきた歴史を持っており、焼け残った部分に新たな建物を足してできたこの修道院。20世紀の後半にも火災にあって、再建されたのだとか。

エスフィグメヌ修道院

10世紀末にアトス半島の北西海岸に創設されたエスフィグメヌ修道院。14世紀にコンスタンティノープルの総主教アタナシオス1世が一時期滞在していました。

出典:https://www.waseda.jp/

今日のアトスにおいて、最も厳格な修道院の1つとして知られています。異教徒の主聖堂への立ち入りは禁止されています。

ゾクラフウ修道院

ゾクラフウ修道院は、9世紀末から10世紀初頭にかけて創設されました。

出典:https://en.wikipedia.org

ブルガリア正教会に帰属し、中世以降の重要な写本などを多数所蔵していることで知られています。

アトス入国に必要なもの

アトスに入る前には入国許可証が必要です。これはぎりしゃ 外務省宗教課が独自に発行しているビザで、さまざまな要件を満たしていなければ取得できません。また、正教会の信者でなければ優先順位も下がると言われています。

取得には時間を要し、多くの場合申請してから取得までに数週間かかると言われています。ビザが取得できた場合、最大で4日間の滞在が可能になります。

女性は前述したとおり入国できないため、会場から崖の上に建つ修道院を見学するなどして見学するしかありません。

アトスへの行き方

まず、ギリシャのテッサロニキからバスかタクシーに乗り、約2時間でアトス半島にあるウラノポリに行きます。

出典:https://www.independent.co.uk

ウラノポリからは船でアトスへの玄関口にあたるダフニ港へ行き、ダフニ港からはバスでアトスの中心地であるカリエスへ向かいます。

カリエスはアトスの政府機能を持つ町で、見かける人々が黒い僧衣をまとい、ひげを生やしている以外は、エーゲ海沿岸でよく見かける古い港町を変わりないんだとか。

カリエスから各修道院行きのバスが出ています。

宿泊を希望する修道院へ到着すると、予定と注意事項の説明を受け、宿に案内されます。宿泊費や食費はビザ費用に含まれているため、原則無料、支払うとしても寄付程度となっています。