アジア

ムスタン

近年まで鎖国政策がとられていたネパールのムスタン。

2008年までネパール領の自治王国として存在していたことから「幻の王国」「閉ざされた禁断の王国」などと呼ばれている、ヒマラヤ最深部の都の魅力に迫ります。

ムスタン基本情報

1350年に建国され、2008年ネパール政府による王政廃止に伴い終焉した歴史を持つムスタン王国。

ネパールとチベットの国境にあるムスタン王国は奈良県と同じくらいの広さです。

人口は約9,000人で、住民はチベット人のロッパ族(チベット語で「南の人」という意味)、言語はチベット語です。

長い間鎖国されていたことから、チベットの伝統や文化が破壊されずに原型をとどめて残っています。

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1991年10月までは外国人の立ち入りを一切拒否していたこの地を訪れるための条件は三つ。

一つはネパール政府公認の旅行会社を通して申し込み、政府による許可証を取得すること。許可費用は最初の10日間で500ドル、その後は日毎に50ドルかかります。

二つ目は2名以上で行動しなければならないという制限を守ること。

三つ目はかつてのムスタン王国の首都ローマンタンへ続く、古のキャランバンルートを踏破することです。

アップダウンが激しいうえ、局地的に強風が吹くことが多く、トレッキングをするなら防寒対策は必須のようです。日中は強い日差しが降り注ぎ乾燥しているため、日焼け止めやリップクリーム等で乾燥対策をしっかりすることを忘れずに。

観光スポット

チベットで産出される岩塩をインドへ運んだキャラバンルート。峡谷の中を進む過酷な道のりの連続ですが、切り立つ崖や侵食された地形、乾燥した大地に現れる緑豊かな村々の光景につい足を止めてしまうことでしょう。

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河口慧海ゆかりの地ツァランには、丘の上の真っ赤なゴンパ(寺院)と白い旧王宮があります。約100年前、河口慧海は約10ヵ月ここに滞在し、石を背負っては山へ入り修行を重ねていたのだとか。果てなく広がる大地を進んで5日ほど歩けば、最後の峠から、ムスタン王国の首都ローマンタンが顔を出します。

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城壁に囲まれた町は王宮を中心に寺院や住居がひしめき合い、まるで迷路のようになっていいます。城壁の内部を散策すると、角を曲がるたび、どこか別の惑星に紛れ込んでしまったかのようになります。

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どこを切り取ってもまるで「おとぎの世界」。中国との国境までわずか20kmの場所にある町だとは信じがたい光景が広がります。

そんな歴史的な美しい風景が広がるムスタン王国ですが、鎖国が終焉した影響により近年少しずつ変化が見られています。

現在、ムスタン-中国間では貿易が年に2度だけ認められていて、町に大量の中国製品が流れ込んでいるといいます。歴史的なムスタンにも、近代化の波が徐々に近づいてきているのです。

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とはいえ近年では、とある洞窟で約1500年前の古代チベットの美術品や古文書、遺骨が発見されたりと、チベット文化がこの地にしっかりと根を張っていることを改めて実感させられるようなことも起こっているよう。

近代化の波が推しよせ、それに住民が順応していくのは仕方のないことだと思います。

ですが、ムスタン王国が長年守ってきたなにか、それはこれからも大事に守っていってほしいですね。

これからどうなっていくのか、どうなったのか。その行方を自らの目で確かめるためにも、いつかこの地を訪れてみたいものですね。